部下に指示したはずの仕事の経過報告がない
指示した内容とは違う結果になっている
これらは社内のチームで仕事をする時だけでなく、社外の相手との仕事の場合でもよく起きることだ
なぜ自分の言うことが正確に相手に伝わらないのか
それは、コミュニケーションには必ず伝え手と受け手がいて、
伝えたことは相手の理解する過程での枠組み(その時の相手の環境・受け取った情報の処理の仕方・脳への様々な刺激など)によって変わるからだ
私が新米看護師として勤務していた頃、こんな患者さんとのやりとりがあった
私『〇〇さん、今日から飲み薬が始まります。この袋の薬は食前30分に、この袋の薬は食間に、この袋の薬は食後に飲みます。
それぞれどんな作用があるか説明しますね。
〜途中薬剤の効果を説明〜
何かわからないことがありますか?』
患者さん『はいはい、わかりました。ずいぶんとたくさん飲まなきゃいけないのねえ。』
私はこの時、『食間』の薬をどのタイミングで飲めば良いかを理解しているか患者さんに確認することを怠り、説明もしていなかった
本来食間とは『食事と次の食事の間』、つまり食事中ではない
患者さんは『食間薬』を食事中に飲む薬であると受け止めた
それは文字通り『食事の間に飲む薬』と患者さんの理解の枠組みで受け取ったのだ
そのため、食間薬は給食のお膳の上に置かれていた
この件ではたまたま私が配膳する担当だったこと、服薬指導をしたのも私だったため確認に行ったところ、
食間薬を食事中に服用する前に気づくことができ、再度説明して正しい服用方法をご理解いただくことができた
コミュニケーションはお互いの理解の枠組みを積極的に調整して成り立つ
コミュニケーションには必ず伝え手と受け手がいる
先ほどの例のように、相手に伝えているつもりでもこちらの伝えたいことが全て伝わっていることは少ない
それは、伝えたい内容が複雑だったり、様々な調整が必要なことだったり、いろいろな要素が入れば入るほど正確に伝え、相手が正確に受け取ることは難しくなる
伝え手にとって大切なことは
相手に正確に伝えることは相当な努力が必要で、自分も伝え方が完璧でないことを理解すること
伝える前に自分の考えや気持ちを正確に把握し
伝えた後もお互いが分かり合えるように確認作業を行うこと
そして人が理解する枠組みはそれぞれ違い、時にはすぐに理解してもらえないことも承知しておき
諦めずにお互いの理解を一致させるように相手がどのように受け取っているかを確認し、調整すること
受け手にとって大切なことは
伝え手の表情や身振りにも注目し、ただ聞き流して安易に理解したと思うのではなく、相手の話に気持ちを傾けて聴くこと
そして『私はこう受け止めましたが間違いないですか』と相手に確認すること
こうしてお互いの理解の枠組みを超えて積極的に受け止めたことを伝え確認しあうことによってはじめて
『伝える』『受け取る』がうまくいくようになる
正確に伝えることができ、相手の言いたいことを誤解なく受け取ることができる
このようなコミュニケーションは技術である
日々、お互いに意識の相違がないか確認しあう経験を重ねることで、『伝える』『受け取る』技術を習得できるのだ