もっともっと話を聴きたくなる人の話し方

あなたは過去に受けたセミナーや講座等でこんな登壇者に出会ったことがあるだろうか。

 

テキストや資料通りの説明をして、アドリブがない
目の前にいる参加者の反応を見ずに、教える側のペースで講座を進めている
笑いや感動の要素、エピソードがなく話に抑揚がない

 

私はある。
とても魅力的でずっと興味があった内容だったので、募集開始してすぐに申し込みをするぐらいの意気込みだったのだが、
講師が話始めた途端にがっかりすることになった講座が。

 

こんな人の話は前のめりになって聴きたくなる・質問が溢れ出てくる

ではどんな話し方をする人の講座が私にとってあっという間に感じるほど魅力的だったかというと
私が最近参加したイベントで、内容もさることながら、とても感動したものがあるので、それと合わせてまとめてみたい。

こちらは、東京都江戸川区にある葛西臨海水族園。東京都の施設だ。
園内では展示物だけでなく、様々なテーマでツアーを企画されている。
その中で、毎月7のつく日に開催される大人だけが参加できるツアーがあり、
今回は「移動水族館」の活動の裏側がテーマだった。

 

移動水族館とは東京都の事業で、障害や病気などのために来園が難しい方々を対象とし、
来園が難しい方々のいる特別支援学校、病院、社会福祉施設などに水槽が搭載された特別仕様車が出張するものだ。

 

こうした取り組みがあることを葛西水族園内で初めて知り、ぜひ直接担当者から話を聴いてみたいと思った。
私が興味があったのは内容だったのだが、話をしてくれた移動水族園の担当者の話し方が素晴らしく、
冒頭から前のめりで話に聞き入り、様々なエピソードを聞いては涙がこみ上げてくるほどに感動したので、
どんな話ぶりだったのかを紹介したい。

 


 

①導入部分でインパクトのあるネタを仕込んでくる

定員が15名ほどのツアーということで、話し手と参加者の距離が近く、雰囲気はとてもアットホーム。
担当者は参加者一人一人に視線を送り、移動水族園が出張するための前準備で2日間かけて水槽の水を貯め、
魚たちが喧嘩して傷つけ合わないように水槽に移動させる順番を見極め、水槽に移した後に魚たちの体調に問題がないかを確認して、
3日目にようやく出張ができるといった舞台裏を絡めながらその仕事内容を説明してくれた。

 

よもやそんなにも時間と労力をかけた準備期間を経てようやく出張できるという裏側を知り、
ただ単に夢のある企画という印象だけに終わらず、これからどんな話が聴けるのだろうという期待が膨らむ。

 

②実際の活動が伝わる道具や映像で視覚に訴える

今回は翌日が移動水族園に出張するというタイミングだったため、実際に水槽に魚がいる状態の専用トラックを見学することができた。

こちらは『うみくる号』といって、トラックの両面に2基の水槽を搭載しており、熱帯水槽と温帯水槽と水温が違うため、
それぞれの環境で飼育されている水族園内の魚が展示されている。

 

雨天でも濡れずに見学できるようにトラック上部に屋根がついていたり、
少しでも水槽の近くで魚を見られるよう、トラックサイドにスロープも設置されている。

 

また体調や感染症対策などの問題で屋外に出ることができない人のため、
膝に乗せたり両手で持って観察できる透明の水槽を作っていたり、
同様の理由でヒトデなどに触れることのできない人のため、
ヒトデがどんな風にして餌を食べるのかがわかるリアルな生体モデルのぬいぐるみなども用意されていた。

 

ただ行って水槽を見せるだけでなく、水槽のある場所まで来れない人、さわれない人に配慮した取り組みを知ることができ、
より一層この事業の社会的意義と、移動水族園を楽しみに待つ人たちの顔が目の前に浮かんでくるようだった。

 

③話し手自身の失敗体験と、常に参加者の心を引きつける緩急ある話し方

移動水族園を始めた当初、準備段階で魚が病気になったり死んでしまったりと水槽管理に苦労したこと、
初めて障害や病気を持つ人の元へ訪問した時、どんな説明をすれば良いのかわからなかったこと、
トラックの水槽に近づけない人、病室から出られない人に魚を見る機会を提供する方法がなかなか見つけられなかったこと、

 

その時その時で、訪問先の職員の方と話し合いを重ね、その都度道具に改良を重ね、今の方法に行き着いたそうで、
こうした舞台裏やその時の苦しみや葛藤を率直に話してくれることで、どれだけこの取り組みが多くの人に必要とされ、
担当者が真剣に向き合っているのかが理解でき、どんどん話に引き込まれた。

 

また苦しみだけでなく、意思疎通のできない患者さんの手に平にヒトデを乗せた時、
いつもは見せない反応があったことに驚き、とても感動したというエピソードなどを話す時の表情も
心から嬉しかった様子が滲み出ており、聴く側の心を打った。

 

写真は「いそくる号」といって、ふれあいプログラム用水槽や解説用の標本・パネルなどを載せて専用トラックに同行するそうだ。

 

自分が体験したこと・オリジナルの部分は誰にも真似できない財産

世に溢れる話し方のノウハウは、型としてはありなのかもしれないが、
こうした話の中身については完コピはできない。
その時の情景が浮かんでくる、その時の気持ちが手に取るようにわかる、
そんな表現はやはり、体験した本人にしか話すことができないのだ。

 

人前で話すのが苦手という人は、ぜひ人前で話す機会を増やして欲しい。
話すことは才能ではなく、訓練によって上達するものだから。
数稽古を続け、机上の資料ではなく目の前にいる人の反応を見て話し続け、
どんなポイントに反応しているのかをしっかり確認し、
自分の話のどこに魅力があるのかを自覚してほしい。

 

◉葛西臨海公園の移動水族園についてはこちらからどうぞ。
http://www.tokyo-zoo.net/zoo/kasai/idousuizokukan/index.html

 

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